安心の営農へ条件整備を

たまき武光

2023年12月24日 19:00

 他産業に比べ小規模経営が大半を占め、厳しい自然や環境の制約を受ける農業生産は、市場任せでは経営が成り立ちません。農業大国である欧米諸国では、農産物の価格保障や手厚い所得補償で農業経営を支えて環境や農村を維持し、食料自給率を向上させています。

 大多数の農業者が営農を続けられ、農村で暮らせる土台を整えるのは国の責任です。欧米で当たり前になっている価格保障や所得補償を抜本的に充実し、農村で生活できる環境整備など、政府の責任として行うべきだと指摘して県の見解を質しました。

 玉城デニー知事は、「一時期その所得補償も行われていたが、現在また新たな仕組みとして、国が導入を検討しているものと承知している。沖縄県は農林水産業の経営安定生産供給体制の確保、野菜、肉用牛等の価格安定対策共済制度、様々な取組も通して農家、畜産業、水産業の方々がしっかりと生活ができる体制を支えていくということを県民と共に取り組んでいきたい」と答弁しました。

 新型コロナの感染拡大やロシアのウクライナ侵略などに端を発した世界の食料危機は、食料の6割以上を外国に依存する日本の危うさを浮き彫りにしました。頻発する異常気象や新興国の食料需要の激増が食料供給を不安定にしています。穀物をバイオ燃料などに転換する動きも食料市場に影響を与えています。世界はもはや、食料を思うようにいつでも輸入できる状況ではありません。

 国内農業は歴史的な危機に直面しています。中心的な担い手である基幹的農業従事者は、この3年で20万人も減少しました。従事者の59%は70歳以上です。近い将来、担い手の激減は必至です。農地の減少・耕作放棄など生産基盤の崩壊も拍車がかかっています。

 飼料の75%、化学肥料や燃油、野菜のタネ、鶏のひなの大半も海外依存です。一昨年からの輸入価格の急騰で資材価格は軒並み高騰しました。政府が十分な対策を講じなかったこともあり、酪農をはじめ多くの農業従事者が経営破綻や離農に追い込まれました。

 食や農をめぐる今日の深刻な事態は、歴代自民党政権が「食料は安い外国産で」という考え方で農産物の輸入自由化を際限なく進め、国内農業を切り捨ててきた結果です。欧米諸国では当たり前の価格保障や所得補償に背を向け、目先の効率や競争力を最優先する農政は完全に行き詰まっています。

 国民の食料の安全保障のためには平素から食料を国内で確保する最大限の努力が必要です。農業の市場任せを転換し、農業者が安心して営農に励める条件を整えることは政府の責任です。削減され続けた農業予算の抜本的増額が不可欠です。それこそが、国民一人ひとりに食料についての権利を保障する土台です。

 日本共産党国会議員団は8月、食料自給率の向上を国政の柱に据えて、農政の基本方向を抜本的に転換することを岸田政権に申し入れました。農と食料の危機打開は国民的課題です。政治を変えるために力を合わせましょう。




関連記事