辺野古新基地建設で大浦湾の埋め立て予定海域にある軟弱地盤の改良工事を強行するため、玉城デニー知事から権限を取り上げ、斉藤鉄夫国土交通相が防衛省沖縄防衛局の設計変更申請を承認する「代執行」に向けた裁判で、福岡高裁那覇支部は国の主張を追認する不当判決を言い渡しました。知事に25日までに設計変更申請を承認するよう命じ、応じなければ代執行が可能になります。新基地建設反対の民意を無視し、憲法が保障する地方自治の本旨や民主主義を踏みにじる暴挙は断じて許されません。

　裁判では、知事が貫いている設計変更申請の不承認について、それを放置することで著しく公益を害するという、地方自治法上の代執行の要件に該当するかどうかが問われました。
　判決は、「辺野古移設が唯一の解決策」とする国に追随し、不承認が放置されれば普天間基地の危険性は除去されず、「社会公共の利益を侵害する」などと断じました。

　しかし、県が裁判で主張したように、辺野古新基地建設は仮に設計変更の承認が得られたとしても運用開始までに沖縄防衛局の試算でも12年かかります。しかも、軟弱地盤の改良工事は前例のない深度での大規模な難工事になるためさらに大幅な遅延が見込まれます。地盤改良工事の影響で新たな環境保全措置が必要になることも否定できず、一層遅れる可能性もあります。その間、普天間基地は固定化され、早期の危険性の除去にはつながりません。
　普天間基地の危険性を放置してきたのは国に他なりません。1996年に普天間基地の返還を決めたのに、「県内移設」＝辺野古新基地建設に固執し、27年間も居座り続けさせてきた国こそ公益を著しく害してきたのは明らかです。

　県は、凄惨な沖縄戦を経験し、その後の米軍統治、本土復帰を経て今日に至るまで基地被害にさらされてきた県民の辺野古新基地建設反対の民意こそ公益だと訴えました。しかし、判決は県の主張を退けました。公益侵害の判断に民意を考慮し得るとは言い難いとしたことは重大です。

　もう一つの争点は、知事の設計変更申請の不承認について代執行手続き以外の方法で是正することが困難かどうかでした。

　県は、沖縄防衛局の設計変更承認申請の前から今日まで国に辺野古新基地建設問題を解決するため対話の場を設けるよう再三求めてきたにもかかわらず、国は一切応じず、代執行に至ろうとするのは到底認められないと訴えました。

　これに対し判決は、代執行手続き以外の方法に県が求める対話が当たるとは言えないと切り捨てました。一方で判決は、最後に付言として、辺野古新基地建設を巡る一連の問題は「(国と県が)対話を重ねることを通じて抜本的解決の図られることが強く望まれる」と相矛盾したことを述べています。
　それは「今後、十数年にわたって予定されている…(埋め立て)工事を進めるに当たっては、(知事に承認の権限がある)更なる設計概要変更等の必要が生ずる可能性もあり得る」(判決)からです。辺野古新基地建設の中止、普天間基地の即時無条件撤去を求めるたたかいが止まることはありません。